あらすじ
「リリエル、お前がロザリアになれ」
洗礼もなく家族から虐げられて生きてきた少女・リリエル。高慢な双子の姉・ロザリアは、「血濡れの獣」と恐れられる第二王子・ヴィンセントとの婚約から逃れるため、リリエルに成りすまし、密かに想いを通わせていた使用人を連れて駆け落ちしてしまう。
式までに時間はない。父親はリリエルにロザリアとして、ヴィンセントの元へ嫁ぐことを強制する。
「事前に伝えておく。あなたとは、形だけの結婚だ。故にここでは、おそらくあなたの望むのは手に入らないと伝えておこう」
「……食事と私室がないということですか?」
「――は?」
ロザリアとなった彼女に、与えられたのは色のないただ冷え切った夫婦生活――のはずだった。
偽りの名で過ごす日々の中、彼女は血濡れの獣と呼ばれるヴィンセントの真実を知っていき、互いに深く惹かれあっていく。
だからこそ、彼女は願ってしまった。1度でもいい。彼に本当の名前を呼ばれたいと。
幸せで、温かくて、だから痛い。
これは誰よりも、愚かで、欲深い嘘吐きが幸せになるまでの物語。