あらすじ
弔われぬ死者は、一晩で怪物に変わる。
泥にまみれた戦場で、王国軍の斥候兵ラトはただ生き延びたいだけだった。
震える手で仕掛けた罠が、翌朝には十一の死体を積み上げる——それだけで、彼は「怪物」と呼ばれ始めた。
恐怖しか知らない男が、いつしか英雄譚の主役に祭り上げられていく。
だが、英雄譚の裏に、美談などない。
ラト……斥候兵。恐怖と保身だけで動き、その結果「化け物」「軍師」と誤解される。
イーリス・フォン・レーヴェン……名門出身の若き女性騎士隊長。「完璧な騎士」という重圧の裏に、怯えを抱える。
ゴルド……ラトの上官である老兵。火薬と泥にまみれて生きてきた現実主義者。かつて見送った若者の記憶を胸に秘める。
トビ……ラトと同格の若手斥候。最初は反発するが、次第に心を開いていく。
ヴァルド・オルグレン……無謀な作戦を強行する総大将。忖度せざるを得ない権威の象徴。