あらすじ

一九四五年、終戦間近の蘇州。 十五歳の日本人少年・高木貞雄は、父が作った「処理対象者名簿」を抱え、中国人少女・林雪華と水路へ逃げ出す。 人の名前を、声・記録・記憶から切り離す〈無名倉〉。 失われた名前を帰す、水上の〈帰名館〉。 捕らわれた人々の証言を守るため、少年は自らの名前を一冊の本へ置いた。 名前を失った彼は、死を迎えた別の少年から「水野冬一」という名を託され、日本へ帰る。 二つの名前。 それぞれの名前を生きた、異なる人生。 そして海を隔てて交わした、忘れたあとも互いを探すという約束。 八十一年後。 九十六歳になった冬一の前へ、一枚のレコードが返される。 曲は『蘇州夜曲』。 裏には、見覚えのない文字が残されていた。 〈あの夜を、返しに来ました〉 名前は、誰のものなのか。 記録は、人を救うのか。それとも、別の形へ閉じ込めるのか。 戦争の記憶、一冊の本、二つの名前を生きた老人が、失われた自分と大切な人へ帰る歴史ファンタジー。

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カクヨム
カクヨム2026/08/07
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