あらすじ
ある街に転勤してきた流啓人(ながれけいと)は出勤途中に本線と並行して走る錆びた線路と誰もいない駅を見かける。送別会の帰り終電に乗った啓人はその駅に灯りが点き、電車が止まっているのに気づく、そしてホームには深夜にも関わらず、自分の息子と同じくらいの赤い半ズボンを履いた小学生がいた。
啓人は、翌朝、この町出身の川掘という同僚に、そこは廃線で三途川という駅があったが、随分前に閉鎖されたはずだと聞かされるのだった。
それからしばらくして、啓人は、息子の郎(あきら)を連れて山小屋泊の登山に行った帰り、豪雨のために夜遅く見知らぬ古い駅に足止めされてしまった。駅にはホームのベンチに山小屋で一緒だった老夫婦、待合には危険な匂いのする中年男の他男女数人がいた。
降り続く雨を見ながら、啓人は十三年前、登山にでかけ下山後に雨の中で車を走らせていて事故を起こしたことを思い出した。
疲労で、いつの間にか眠ってしまった啓人は、悪夢で飛び起きると捨ててあった新聞記事で連続殺人犯の車崎が死刑になったことを知る。だが、記事に載っていた車崎の顔はさっき待合室にいた中年男の顔だった。確認しに行った啓人は車崎が待合室の乗客を惨殺している現場に遭遇する。郎の元に戻ろうとする啓人を追いかける車崎だったが、駅員から首にロープを巻かれて吊り上げられてしまう。
あり得ない光景に動転した啓人が、ようやく到着した下り電車に走り込むと、郎と老夫婦がホームの反対側の上り電車に乗っているのが見えた。降りようとする彼の腕を万力のような力で引き留めるたのは、赤い半ズボンの小学生だった。
その頃、山小屋近くの滑落事故現場では、川に落ちた老夫婦と郎が救助隊に救出されていた。だが、啓人はどこかに流されたらしく行方不明となっていた。
啓人は、水面に浮かび上がれそうになったところで、何かに引っかかった。その瞬間、啓人は十三年前に赤い半ズボンの小学生を撥ねたことを思い出した。水中で枝に絡まった白骨が赤い布をまとっているのを見て、それが彼が橋から投げ落とした少年のものであることを知り、啓人は水を飲んでしまう。
その頃、三途川駅では、啓人が車崎と同じ電車に乗って出発するところだった。
一年後、釣り人が啓人と十四年前に行方不明になった少年の死体を発見したというニュースが流れた。
少年の白骨は啓人の手を握っているように見えたという。