あらすじ
祖母の訃報を受け、主人公の玲は母とともに久しぶりに母方の実家を訪れる。父を亡くして以来、足が遠のいていた家は、記憶よりも大きく、どこか外から切り離されたような空気をたたえていた。
通夜と葬儀は滞りなく進み、親族たちも慣れた手つきで役割をこなしていく。だが火葬後、遺骨の一部が別の箱に移されるのを見て、玲はこの家に、表向きの葬儀とは別の作法があることに気づく。
夜、親族だけが集まって始まった「骨分け」は、祖母の骨を粉にしたものを飯にかけ、一人ひとりが一口で食べて名を呼ぶという、異様だが当然のように受け継がれてきた儀式だった。玲だけは二杯分を与えられ、自分が「引き継ぐ者」に選ばれていると知らされる。最初は拒み、逃げ出すことも考えるが、母の沈黙と伯父の説明に押され、玲はそれを口にする。
半年後、東京での生活に戻った玲は、ふとした拍子に祖母の口癖を自分の口から漏らし、母からの電話でも、家の中で何かが静かに継がれていく気配を感じる。骨を食べたことで何かが劇的に変わるわけではない。ただ、自分の中に祖母の痕跡が残り、誰かの言葉や気配が消えきらずに生き延びていくことを、玲は少しずつ実感していく。