あらすじ
完璧な未来には、依頼人が隠した一輪の棘がある。
人が選ばなかった未来が、花となって現実を侵食する世界。
夜だけ開く花屋「夜明堂」で、久世夜一は依頼人の後悔や嫉妬、愛情を花束へ束ねる〈送花師〉をしている。
夜一には、残花の中でもっとも幸福な未来を見る能力がある。
相棒のマシロは、人の後悔を食べる、人間の姿をした花だ。
嘘を床から拾おうとし、店の商品を味見し、コーヒーへ蜂蜜を三杯要求する。
しかし残花を食べるたび、彼女の中には他人の記憶や人格が混ざっていく。
ある雨の夜、十年前に失踪した母親が帰ってきたという少女が訪れる。
母親がいた未来では、父親は病気にならず、少女も介護に苦しまず、家族三人で幸福に暮らしていた。
その未来は偽物ではない。
誰も傷つかなかった、本当にあり得た人生だった。
それでもその未来を咲かせれば、少女が苦しみながら生きてきた現在は消える。
選ばれなかった人生を燃やすのか。
傷だらけの現在を捨てるのか。
それとも、醜い感情まで一つの花束へ束ねるのか。
甘すぎるコーヒーを飲む人花の少女と、幸福な未来を見誤る少年が、人間の矛盾を花にする現代異能ミステリー。