あらすじ

嫁いだ日に言われました——「祝い器は蔵に仕舞っておけ。披露はしない」。蔵の隣の賄い場では、従士二十人が欠けた椀十六を譲り合っておりました。 使わないとお決めになった器なら、空き物でございましょう。わたくしは祝い器百客分を賄い場へ開け、余りは年の市で、椀二十と膳二十と鍋二つに変えました。 湯気の立つ膳が揃って、皆さまは初めてご覧になります。仕舞われた三年が、何を守っていたのか——器の値打ちごと、死なせていただけだったことを。 ——「祝いの器を出せ」と仰いますの? 暮らしに変わった器は、もう蔵には戻りません。器は、使われて初めて器ですわ。

連載情報

ウェブ小説

配信言語
小説を読もう
小説を読もう2026/08/06
  • 現在の作品「名だけの妻に披露は要らない」と死蔵された祝い器百客分——館の暮らしに変えました。お客の日、蔵は空ですわ