あらすじ
人は「心」を持つことで人間である――そんな常識が揺らぐ世界。
この社会には、“ゾンビ人間”と呼ばれる存在が紛れ込んでいる。彼らは魂や心を持たず、肉体だけで生きているにもかかわらず、怒りや悲しみ、愛情といった感情を完璧に再現することができる。外見や振る舞いからは、普通の人間と見分けることはできない。
高校生の主人公は、クラスメイトの宮坂由奈から「もし目の前の人がゾンビ人間だったらどうする?」と問いかけられる。軽く受け流していた彼だったが、ある日、不死身のように振る舞う“ゾンビ人間”を目撃したことで、その存在を現実として意識し始める。
やがて宮坂は、自らが“ゾンビ人間”であることを告白する。彼女は痛みも悲しみも言葉として表現できるが、それを「感じている主体」が自分の中に存在しないという。すべてはただの反応に過ぎないのだと。
それでも主人公は、「それでも君は君だ」と受け入れる。
その言葉により、宮坂はあるひとつの結論にたどり着く――人間とゾンビ人間の違いは、心の有無ではなく、“誰かがそれを信じるかどうか”なのだと。
しかし彼女は姿を消す。
残された主人公は問い続ける。
目の前の人間は本当に“心”を持っているのか。
そして、自分自身は本当に人間なのか――。
これは、「心とは何か」を問う静かな恐怖と切なさの物語。