あらすじ
夫と離縁し、二人の子と死別した尼僧・貞心(誠)。
世間の悲話に応えるように「悲劇の尼僧」を演じて生きていた彼女は、ある日、飄々と子供らと戯れる奇人であり至高の僧・良寛と出会う。
歌を通わせ、確かに心を重ねた二人。
しかし、その日はあまりにも早く訪れた。
「渡してなるものか。私が、あの人を残すのだ」
良寛の没後、彼の言葉を完璧な形で世に伝えるため、貞心は遺稿の編纂を始める。
だが、彼を「誰もが羨む美しい存在」として遺すため、彼女の指先は静かに動き出す。
二人の絆を示す手紙から「貞心」の宛名を切り落とし、老いの弱音や泥臭い失敗談を火鉢の炭で灰に変えながら——。
愛する人を守るための遺志か。自分好みに書き換えるエゴ(業)か。
切り削られた言葉の果てに、彼女が見た真実とは。
◆ 主な登場人物
貞心(誠): 悲劇の過去を持つ尼僧。良寛の最期の温もりを知る者として、愛ゆえに彼の言葉を「編集」していく。
良寛: 越後の詩僧。無邪気さと底知れぬ静けさを持ち、誠だけに最期の歌を残す。
山田静里: 誠の長年の理解者。編纂された歌集に『蓮の露』の題を授ける。
蔵雲: 生前の良寛に会えなかった悔いを抱え、誠と共に詩偈集『良寛道人遺稿』を編む僧。
◆ 作品情報・更新スケジュール
全4章・全19話(約17,000文字 / 完結作)
毎日1話更新(20時0分)
歴史・時代小説がお好きな方はもちろん、「愛ゆえの狂気や執着」「エゴと解脱」といった人間の深みを描いたドラマが好きな方にもおすすめの中短編です。
最後までお楽しみいただけますと幸いです!