あらすじ

承認欲求の塊――それが、美人インフルエンサー・早乙女由貴(24)だ。 彼女はSNSの「いいね」が心臓の代わり。「綺麗だね」「可愛いね」という言葉を浴びるたびに、自分の存在を確かめずにはいられない。 由貴の隣には、幼馴染で売れない小説家の橘蒼石(27)がいる。無口で無表情。彼は由貴のアシスタント兼カメラマンとして、彼女のSNS運用を支えている。しかし、彼だけは絶対に由貴に「綺麗」と言わない。代わりに、彼は彼女の“何気ない一瞬”を写真に収め、詩的なキャプションを添えるだけだ。 由貴は蒼石の口下手な愛情に不満を募らせていた。そんなとき、由貴の古参ファンであり、マーケティング会社のCEOである響涼太(30)が現れる。涼太はコミュニケーションの天才で、具体的で甘い言葉で由貴を次々と虜にしていく。 涼太の巧みな言葉に、由貴は次第に蒼石と比較し始める。 「蒼石は私に『綺麗』と言わない。でも涼太は毎日言ってくれる――」 二人の間には、少しずつ、しかし確実に亀裂が走る。 しかし、涼太の言葉の裏には、由貴を“商品”として使い潰そうとする冷徹な計算があった。蒼石はそのことにいち早く気づくが、口下手ゆえに由貴に伝えられない。伝えれば伝えるほど、二人の溝は深まるばかり。 傷心した蒼石は、由貴のもとを去る決心をする。 そして、彼は由貴という存在を綴った小説を、匿名でカクヨムに投稿した。 ――それが、思いがけない奇跡を呼ぶ。 蒼石の小説は瞬く間に話題となり、彼は一躍“売れっ子小説家”への道を駆け上がる。一方、由貴は彼の小説を読み、そこで初めて「自分が彼にとって唯一の“言葉”だった」ことに気づく。 彼は「綺麗」と言わなかった。その代わりに、彼は由貴という存在を、細部に至るまで“言葉”にしていたのだ。 由貴は蒼石を追いかけ、山陰の小さな町へと向かう。 そして再会した二人は、互いに「言葉」を紡ぎ合う、新しい関係を築き始める。

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カクヨム
カクヨム2026/08/05
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