あらすじ
連日の酷暑の中、突然の大雨に見舞われた私は、雨宿りをしながら奇妙な男を見かける。傘も差さず、ずぶ濡れの長い髪で独り言を呟く男。その姿には、六十一年前の記憶が重なっていた。
小学生だった頃、雨の日に「山へ一緒に行かないか」と声をかけてきた、雨男。さらにその翌日、ランドセルに見知らぬ道祖神のお札が張り付いていた。お札を捨ててしまった私は、祖母から激しく叱られる。祖母はお札を返しに行ったまま帰らず、田んぼの中で死体となって発見された。
あれから六十一年。
再び現れた雨男は、私の自転車を引っ張りながら、あの頃と同じ言葉を呟く。
「今度こそ」
そして最後に、私へ向かってこう言った。
「おまえを、よこせ」
酷暑と大雨の向こうから、忘れたはずの過去が訪れる日常怪談。