あらすじ
真鍮と歯車の街、ブラスヘイヴン。
工房エリアの片隅には、少女リリィと黒猫ナイトが暮らす、小さな修理店があります。
古い懐中時計、欠けたティーカップ、動かなくなった機械仕掛けの鳥。
今日も店には、誰かの大切な思い出が詰まった壊れものが持ち込まれます。
リリィには、物に触れると、そこに残された記憶や思いを感じ取る不思議な力がありました。
大切に使われた時間。
言えなかった「ありがとう」。
忘れたくない笑顔。
もう一度だけ聞きたい声。
リリィは物が抱える小さな記憶に耳を傾け、ひとつひとつ丁寧に修理していきます。
壊れたものは、すべてを元通りにできるとは限りません。
それでも、傷や欠けを残したまま、新しい時間を刻み始めることはできます。
これは、物に宿る思い出をそっと繕う少女と、いつもそばで彼女を見守る黒猫の、少し不思議で心温まる物語。
一日の終わりに、心がほんの少しやわらかくなる、一話完結の短編集です。