あらすじ

~ 熊本・イオンモール爆発事故における二人の殉職者と、売上金回収を命じた企業、そしてそれを許した企業たちの責任〔1〕 ~ 令和8年7月28日、熊本県を襲った大地震の直後、イオンモール熊本で大規模な爆発事故が発生した。 報道によれば、同施設内の雑貨店「ハビタ」で勤務されていた大竹玖瑠美さん(22)と同僚の女性従業員(25)のお二人は、地震発生後、いったん屋外へ避難されていた。しかしその後、勤務先の会社から店長を通じて売上金を金庫へ戻すよう求められ、再び館内へ向かわれた。そして、お二人とも、その場からの帰還は叶わなかった。 なお、もう一人の方の氏名は報道されていない。本稿もそれに従う。以下、お二人に共通する事実は「お二人」として書き、報道によって行動経過が明らかにされている箇所は、大竹さんの名で記す。 会社側は、幹部から店長へ、店長からお二人へと、二段の電話によって、 「もし可能であれば、売上金を金庫に戻してくれないか。もし店内に入れるのであれば」 という趣旨が伝えられたことを認めている。〔2〕 西日本新聞の報道によれば、大竹さんは駐車場でおばといとこに遭遇され、館内へ戻ろうとされるところ、制止を受けた。それでも、その場におられた同僚の方とともに「会社の人から頼まれた」と言って、店へ戻られた。会社側も、売上金を金庫へ移すためにお二人を館内へ戻す指示をしたこと自体を認めている。〔3〕 本稿が最初に問うのは、この指示の中に置かれた、わずか一語である。 「もし」 この「もし」は、従業員の安全を気遣い、最終的な判断を本人に委ねた言葉だったのか。 私は、そうは考えない。 むしろこの「もし」という言葉こそが、お二人の退路を塞ぎ、危険を理由として拒否する余地を奪い、死地へ向かわせる決定的な言語的機能を果たしたのではないか。

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小説を読もう2026/08/05
  • 現在の作品熊本・イオンモール爆発事故における二人の殉職者 「もし入れるのであれば」――退路を塞いだ非情な一言