あらすじ

山と川に挟まれた宿場町レフナで、小さな異変が続いていた。 井戸水の濁り。 温かくなった地下倉庫の壁。 街道に走る亀裂。 山から姿を消した獣たち。 中央監査庁の若い記録補助官ユスト=カレルは、それらが一つの災害の前触れではないかと疑う。 しかし、ユストには町を避難させる権限がない。 守備隊長は町長の命令を待ち、町長代理は鉱山技師の判断を待つ。医務官は患者を治療できるが、町全体を動かすことはできない。 誰も町を見捨てようとはしていなかった。 誰もが、自分にできる仕事をしていた。 それでも、誰が最初に避難を決めるのかだけが、どこにも書かれていなかった。 やがて町は、近隣を巡る英雄へ救援を求める。 英雄が来れば、きっと助かる。 そう信じる人々の中で、宿屋の少女リナがユストへ尋ねた。 「英雄が来なかったら、誰が鐘を鳴らすの?」 これは後に、人を救う制度を作る整序官となった男が、三百十二人の名前を数えた夜の物語。

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小説を読もう2026/08/05
  • 現在の作品英雄が来なかった町 ―三百十二人を数えた記録官―