あらすじ
一九六二年、サンフランシスコ湾。
脱獄不可能と謳われた監獄島、アルカトラズに一人の日本人が収監された。
名は、黒崎玄。
日本の暴力団組織からアメリカへ送り込まれ、犯罪組織同士を繋ぐ「連絡役」を務めていた男だった。
判決は無期懲役。
世界各国の犯罪組織の首領や幹部が収監される「ザ・ロック」で、黒崎は唯一の日本人として囚人たちの中に放り込まれる。
だが、彼には誰にも知られていない秘密があった。
英語しか話さない男。
そう思われている黒崎は、実は複数の言語を理解していた。
イタリア語も、中国語も、スペイン語も。
囚人たちが交わす密談。
看守たちの会話。
誰にも聞かせるつもりのない言葉。
黒崎はすべてを聞きながら、何も知らない顔をしていた。
やがて彼は、看守長が囚人たちへ情報を売っていることに気づく。
そしてアルカトラズ閉鎖の噂。
さらにその裏には、閉鎖後の島そのものを犯罪組織へ売却しようとする、政府の不可解な計画が存在していた。
互いに敵対する世界各国の勢力。
売られる情報。
疑心。
裏切り。
そして、誰も知らないところで盤上を動かし始める黒崎。
彼が望むのは脱獄ではない。
生き残ることでもない。
ただ、この島で起きていることの真相を知ることだった。
やがてアルカトラズは、最後の一年を迎える。
そして――
歴史には記録されない、最後の抗争が始まる。
数年後。
刑務所だった島は観光地となった。
かつての無期懲役囚は、観光客に紛れて再びアルカトラズを訪れる。
あの日、自分を閉じ込めた島を見つめながら。
彼はまだ知らない。
自由になったはずの自分を、最後に待っているものが何なのかを。
自由になった男は、死ぬまで囚人だった。