あらすじ
かつて王国最高峰の従者を輩出し、「四従家」の一角に数えられていたグレイ男爵家。
しかし八年前、当主アルベルトが主人を置いて戦場から撤退したことで、グレイ家は「主人を見捨てた臆病者」の烙印を押される。爵位こそ残ったものの、信用も契約も財産も失い、今では没落寸前となっていた。
その跡取りであるカイル・グレイは、家名を取り戻すため、名門貴族と従者候補が集まる五年制の王立主従学院を受験する。
掃除、料理、給仕、礼儀作法、生活魔法。
従者として必要な技術を高い水準で身につけているカイルだが、本当に得意なのは、毒への対処、潜入、罠、闇魔法、そして不利な状況から主人を生還させることだった。
正面から勝つことにはこだわらない。
必要なら逃げる。騙す。手札を隠す。
すべては、主人と自分が生き残るために。
そんなカイルを従者として指名したのは、王国を支える四大公爵家の令嬢、アリシア・フォン・ローゼンハルト。
剣の天才で、強気で負けず嫌い。危険を前にすれば真っ先に飛び込み、撤退を嫌う少女だった。
「私の従者になりなさい」
「お断りします」
「どうしてよ!」
勝利を求める主人と、生還を優先する従者。
正反対の二人は衝突を繰り返しながら、学院の試験、四大公爵家と四従家の思惑、そしてアリシアを狙う誘拐計画に巻き込まれていく。
これは、主人を信じられない執事見習いと、誰にも頼れない公爵令嬢が、本物の主従となるまでの物語。
そして、臆病者と呼ばれた一族が、再び王国に必要とされるまでの物語である。