あらすじ
1807年2月。
清二郎との間に二人の子を授かった千世は、若女将として、また母として、息つく暇もない日々を送っていた。
待宵太夫の身請けが決まり、この度もその祝い茶の仕立てを仰せつかった蓮見屋。
そんな大仕事を控えていたある日、一人の男が島原に姿を現す。
京の商界を牛耳る大店の息子・萬屋源九郎───江戸での修行から帰京したばかりの、かつて千世に熱烈に求婚した人物だった。
蓮見屋と同じく、待宵太夫に献上する紅をあつらえていた源九郎は、その紅と蓮見屋の茶を抱き合わせるという、過去に例を見ない斬新な共同事業を提案してくる。
商いの裏で静かに紐解かれる、千世と源九郎の隠された過去。
割り切れぬ苛立ちを抱えつつも、至極の一服に精神を注ぎ込む清二郎。
私情に流されてはいけない渡世で、互いの腹のうちを探り合う男たち。曲げられぬ信念を秘める女たち。
誇りを背負う者たちが描くものとは───。