あらすじ

ビザンツ帝国からエルサレム王国へ、先王の後妻として嫁いできたマリア。しかし先王は崩御し、残された彼女を待っていたのは、魑魅魍魎が玉座の利権を狙う「暗い牢獄」のような王宮だった。ヨーロッパの闇から富を吸い上げる金の亡者・ウード枢機卿。権力欲に駆られた先王の前妻アニェス。そして外見だけは完璧な「美しき無能」ギルバート。孤独な謀略の渦中、マリアが出会ったのは、身体が徐々に崩壊していく難病を抱えながらも毅然と立つ15歳の少年王ルキウス。そして、ルキウスの手足となって無双する、生え抜きの若き騎士バルトだった。「利用してやる。この二人さえいれば、私はこの王宮で生き残れる!」冷徹な計算から始まった出会い。しかし、戦場では死神のように敵を叩き伏せるくせに、自分の視線ひとつで耳まで真っ赤にして狼狽えるバルトの純朴な魂に触れたとき、マリアの氷の仮面は崩れ、一人の女性として激しく惹かれていく。迫り来る外来派の魔の手。マリアは、ルキウス王の知略、そして夫となったバルトの武力と共に、自らも元王妃としての鋭い知性を武器に立ち上がる。ウードの財布を叩き潰し、愛娘フローラを狙った最悪の政略結婚をも「大逆転の寝返り劇」へと変えてみせる。だが、狂犬レオンの暴走により、砂漠の覇者・英雄王サラザールが数万の大軍を率いて進軍。内戦一歩手前の危機の中、ついに失明し動けなくなったルキウス王は、バルトに全てを託して輿(寝台)での出陣を強行する。――「目が見えぬなら、バルトが私の目となってくれる」愛する夫バルトと、我が子のように愛おしい若き王の背中を、マリアは涙ながらに見送る。天才王の神がかった指揮のもと、サラザールに敗戦をもたらした歴史的大決戦。しかし、聖地を守り抜いた満足感の中で、ルキウス王はバルトの腕に抱かれて静かに息を引き取った。『私は、あの男からこの街を守り抜いたぞ。……次は、お前の番だ』「ええ、バルト、いえ、あなた。さあ帰りましょう」「ああ」陽光のように輝いた時は終わり、残光の時代を迎えるエルサレム。若き王が命を懸けて遺してくれた子供たちの未来、そして掴み取ったバルトとの愛を守るため、マリアは再び押し寄せるウードや無能ギルバートの陰謀の闇へと、冷徹な闘志を胸に一歩を踏み出す。これは、過酷な運命に立ち向かい、聖地の残光を駆け抜けた一人の女性の、壮大なる愛と知略の物語。

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カクヨム2026/08/04
  • 現在の作品陽光のクルセイド