あらすじ
「お前のような真面目くさった女はいらない。婚約は破棄させてもらう」
公爵令息グイードに衆目の中で言い放たれても、リラ・プリマヴェーラの心を占めていたのは悲しみではなかった。
惜しかったのはただ一つ、調査の足がかりを失ったことだけだ。
伯爵令嬢リラには『鬼の騎士団長』の娘として、恋よりも優先すべき使命があった。
十年前、幼い王子たちが相次いで命を落とした事件――その真相を暴き、いまだ犯人を挙げられずにいる父の名誉と、王国の未来を陰謀から救うこと。
夜会で恥をさらした彼女を助け起こしたのは、天使の歌声を持つ美貌の歌手アルカンジェロだった。
彼もまた同じ事件を追っていると知ったリラは、音楽教師の名目で彼を屋敷に迎え入れる。
事件解決の協力者として彼と接するうち、リラは謎めいたアルカンジェロに危機を救われることになる。
だが、アルカンジェロはカストラート(去勢歌手)。子を残せぬ彼らに、教会は結婚を許さない。
だからリラは恋などしない。彼女の望みは事件解決だけなのだから――
しかしリラは真実を知らなかった。
アルカンジェロの正体が、十年前に暗殺されたはずの第三王子であることを。
手術など受けぬまま、血のにじむ研鑽の末に偽りの歌声を作り上げたことを。
そしてその声が、幼い日に出会ったリラが「綺麗な声」と褒めてくれた、たった一つの宝物だったことを。
十年間、彼はリラだけを想い続けていた。
やがて王家をめぐる陰謀が静かに動き出し、再び彼の身にも危険が迫る。
猪突猛進な堅物令嬢と、偽りの声で彼女を守る王子。宮廷の闇を切り裂く二人の恋の行方は――?
※本作は、過去に投稿していた『初恋はリラの花のように~私を溺愛する秘密の恋人は暗殺されたはずの王子様!?刺客から逃れて幸せになるために立ち向かいます!~』の設定・キャラクター・構成を大幅に改稿し、新作として再構成したものです。