あらすじ
文化十一年、武州の村に現れた「戻らずの井戸」。
覗いた者は消える。 帰ってこない。 ただそれだけの、実にシンプルな怪異――のはずだった。
しかし、その井戸の前に毎晩立ちはだかる男がいた。
名は半助。 自称・怪異退治屋。 実態は、怪異に文句を言い、沢庵を投げ、最終的には尻まで出す男。
村人からは「またやってるよ」と温かい目で見られる日々。
だがある夜、井戸の底から聞こえた声は、十五年前に消えた妹のものだった。
笑いで覆い隠した後悔。 忘れたふりをした喪失。 そして、井戸の底に待っていたものとは――。
これは、沢庵と尻で怪異に挑む男が、最後に向き合う「家族」と「存在」の物語。
笑って、震えて、最後にアオミドロを見つめる不条理怪異譚。