あらすじ
ある日、自称ごく平凡な高校生・黒瀬玲司は、書いた内容がそのまま現実になる、正体不明の『常識改変ノート』を手に入れる。
半信半疑のまま何度か試すうちに、そのノートが紛れもない力を持つことを確信した玲司は、やがて一つの決意を固めた。
近い将来必ず訪れるとされ、三十万人を超える命を奪うと予測されている二つの巨大地震――南海トラフ地震と首都直下地震。
それらを、この世界から消し去ろう、と。
しかし、その願いをノートへ書き記した瞬間、白紙だったページに赤い文字が静かに浮かび上がる。
『実行条件を提示します。』
『地震によって放出されるはずだった、広島型原爆およそ三万二千発分に相当する莫大なエネルギーを消費せよ。』
『地震によって回収されるはずだった、三十万人を超える魂を集めよ。』
世界の法則を書き換えるには、それに見合うだけの代償が必要だった。
だが、玲司が目指す未来に、そんな理不尽があってはならない。
人類を救うために、何の選択肢も与えられないまま、罪のない誰かの命を代償にすることなど、できるはずがない。
来る日も来る日も答えの出ない問いと向き合い続けた玲司は、やがて一つの結論へ辿り着く。
それは、自らの意思で覚悟を決め、危険へ挑んだ者だけが、その代償を引き受ける――そんな新しい世界を、自らの手で創り出すことだった。
「――ダンジョンを、作ろう。」
玲司が導き出した答え。それは、地震によって放出されるはずだった莫大なエネルギーを利用し、この世界にダンジョンという新たな仕組みを創り出すことだった。
その覚悟をノートへ書き記した瞬間――。
返ってきたのは、これまでの無機質な赤文字とはまるで違う、あまりにも軽い一言だった。
『えー、ダンジョン!? それ面白そう!』
『一人だと大変でしょ? サポートの妖精、一人送っとくね。頑張って!』
次の瞬間、玲司の目の前に、一匹の小さな妖精が姿を現す。
誰にも見えず、誰にも聞こえない。
玲司だけが見える、小さな相棒。
こうして、一人の高校生と一匹の妖精による、誰にも知られない世界改変計画が静かに動き始める。
迷宮を創る。
魔物を生み出す。
魔石を世界へ巡らせる。
そして、人々は探索者として迷宮へ挑む。
そのすべては、いつか何の前触れもなく人々の命を奪うはずだった大災害を、この世界から消し去るために。
これは、一人の少年が世界の因果を書き換え、人類の未来を賭けて動き出す――壮大な計画の始まりの物語。