あらすじ
仕事終わりの楽しみは、長年遊び続けたネットゲームだけ。
ブラック企業で働く三十代のおっさん・ユウは、ある日突然、見知らぬ異世界の牢屋で目を覚ました。
転移したのは本人だけ。
レベルもステータスもゲームキャラクターも存在しない。
だが、なぜかゲームのインベントリだけは、そのまま持ち込まれていた。
中に入っているのは、サービス開始から終了まで集め続けた大量のゲームアイテム。
初心者ポーション。
初心者装備。
通信水晶。
転移スクロール。
修理ハンマー。
本人にとっては「便利なゲームアイテム」でしかない。
しかし、その世界では神代文明はすでに滅び、同じような技術も魔道具も失われた伝説となっていた。
病気を治せば『神代の秘薬』。
収納を見せれば『異空間魔法』。
通信水晶を渡せば『戦争を変える神具』。
転移スクロールを使えば『世界を自由に渡る英雄』。
ユウは本当のことしか言わない。
「初心者用です。」
「余ってたので。」
「便利ですよ。」
それなのに、世界だけが勝手に勘違いを深めていく。
王家は彼を神代文明最後の継承者だと信じ、やがて伝説の軍団《ラストレギオン》を率いた英雄だと勘違いする。
冒険者ギルドは、存在しない最高位『EX冒険者』だと噂し始める。
教会は神の使徒だと崇め、ついには――神そのものではないか、とまで言い出した。
一方、当の本人は。
「なんか毎回大げさなんだよなぁ……。」
今日もゲームアイテムを片手に、困っている人を助けているだけだった。
これは、普通のおっさんが本当のことしか言わないせいで、世界中から英雄に勘違いされてしまう異世界勘違いコメディ。