あらすじ
十二年、町の番傘を張ってまいりました傘張りが、濡れ衣で「偽の紙を張った」と寄合に晒され、印判を伏せて張らずにおりましたら、梅雨でお宅の傘だけ破れました。
湿った年は骨が反る。反りを見越して継ぎを二分ずらす。傘置きに残るのは張り上がった傘だけで、その二分は残りません。それを読めるのは、わたくしの目だけでございます。
わたくしは裁きません。決まりどおり、印判を押した骨にしか紙を張らないだけでございます。破りも怠りもしておりません。ただ、決まりを守っております。
——梅雨が明けるころ、傘の講は、あのお店へ張替を回さなくなりました。