あらすじ
四年で、呼び方が三度変わりました。日付は全部、書き留めてございます。
「マリー」が四百十二回。「君」が三百五十八回。「おい」が二百九十一回でございます。
わたくしは日記をつけているのではございません。呼ばれるたびに、手帳へ線を一本引くだけでございます。字は書きません。
婚約解消を告げられたその場で、わたくしは三冊の手帳を開きました。「そんな些細なことを」と仰る方へ、こうお答えいたします――はい、些細でございます。ですから四百十二まで数えられたのでございます。
手帳は、その晩に焼きました。もう数えなくてよくなりましたので。
こんな方におすすめ:怒鳴られない加害/小さな変化を数える主人公/読後に呼び方を意識してしまう話