あらすじ
海辺の小さな町で郵便配達員として働く柏木遼は、ある雨の日、一人の少女から宛名も住所もない手紙を託される。
宛先は、役目を終えて久しい岬の灯台。
少女は「届けるのは郵便屋さんじゃありません」とだけ言い残し、姿を消した。
町でその話を知る者はほとんどいない。それでも、わずかな記録や人々の記憶をたどるうち、遼は人生の節目にだけ灯台を訪れ、誰にも届けられなかった思いを静かに手放す人々がいることを知る。
手紙は本当にどこかへ届くのだろうか。
灯台は何を受け取り、少女はなぜ彼に手紙を託したのか。
答えは最後まで語られないまま、一人の郵便配達員だけが、「届ける」ということの意味を少しだけ違う形で知っていく。
静かな海辺の町を舞台に、人と言葉の行き先を描く幻想短編。