あらすじ
この世界の人間は、十五になると神殿で「二つ名」を授かる。
もらった名前が、そのまま力になる。
「疾風のリク」は速い。「不屈のヴィム」は倒れない。
だから名前で仕事が決まり、名前で一生が決まる。
俺、クルトは三度その儀に出て、三度とも何ももらえなかった。
無名。まともな職には就けず、酒場で皿を洗っている。
ところが、ある日気づいてしまった。
――どうやら俺は、他人に二つ名をつけられるらしい。
二十五年「石割り」と呼ばれ、一度も石を割れなかった男がいた。
彼は石割りなんかじゃない。ただ、耳が異様によかっただけだ。
「あんた、石割りじゃないだろ」
そう名づけた瞬間、その人は化けた。
地味すぎると笑われた名前で、酒場で一番強い男になった。
神殿の授名は、外れることがある。
記録に残っているだけで、三千件のうち二百件以上。
合っていない名前を背負わされたまま生きている人が、この街にはまだいる。
これは、名前をもらえなかった少年が、他人の名前を直していく話。