あらすじ
高校三年生の何森純恋(いずもり すみれ)は、二年前の文化祭を最後に脚本を書くことをやめた。
純恋が書いた恋愛劇の主人公を演じたのは、親友の七瀬凪。
物語は、凪が「私は、あなたが好きだよ」と告白し、二人の少女が結ばれるはずだった。
けれど本番で、凪は台詞を変えた。
「私は、あなたなんか好きじゃない!」
そして舞台上で泣き崩れた。
凪の迫真の演技は観客の胸を打ち、幸福な恋物語は、語り継がれる失恋劇へと変わった。
ただ一人、脚本を書いた純恋を置き去りにして。
あの日を境に二人は絶縁した。
凪は学園中の憧れを集める「王子様」となり、女優として注目されていく。
一方の純恋は、物語の続きを書けなくなった。
それから二年。
最後の文化祭を前に、凪が純恋のもとを訪れる。
その手にあるのは、純恋が誰にも読ませず捨てたはずの未完脚本『さよならの練習』。
離ればなれになる二人の少女が、傷つかずに別れる方法を探す物語だった。
「これの続きを、書いて」
純恋は三つの条件を出し、結末の執筆に取り組む。
台詞を一文字も変えないこと。
稽古以外では、純恋に触れないこと。
そして、二年前のことを聞かないこと。
手をつなぎ、抱き締め、嫌いになったふりをして、何度も別れを演じる二人。
失恋の練習を重ねるほど、終わったはずの感情は、隠しきれないほど鮮明になっていく。
なぜ凪は、あの日、純恋の結末を壊したのか。
なぜ二年もの間、捨てられた脚本を持ち続けていたのか。
そして凪は、文化祭が終われば純恋の前からいなくなる。
脚本にしか本音を書けない少女と、台詞なら演じられるのに、自分の気持ちだけは言えない少女。
最後の舞台で二人が演じるのは、別れか。
それとも、二年前に失われたはずのハッピーエンドか。
その答えが書かれるはずの最終ページは、まだ空白のままだ。