あらすじ
十三の冬、私は母を作った。そして父は、母を忘れた。
死者の想いが器に宿る国・トウカ。港都ツクモの人形師イオリは、亡き人の面影を映す「面影人形」を作り、遺された人々の別れを手伝って生きている。
似せすぎてはいけない。名を分けてやること。人形は別れのために、永遠のためにあらず——組合の掟を誰より固く守るのは、彼自身がかつて、掟を破った子どもだったからだ。
遺髪をありったけ編み込んだ母の人形は、夜ごと母の声で囁いた。それを解くために、父が何を差し出したのか。その代償を知る生き残りは、この世に彼ひとりしかいない。
袖を握る癖ごと息子を見送る母。五十年連れ添った妻の「手」だけを覚えている老船頭。犬の人形を抱いて泣く少女。人形を溺愛する強面の船大工。そして、他人の涙を美しい石に変えながら、自分の涙だけ流せない職人ミズハ。
穏やかな連作の底で、禁忌の「還り人形」を売り歩く者たちの影が近づき——やがて潮が、十三年前に流したはずのものを、浜へ還す。
これは、母を人形にした罪人が、十三年目の弔いをやり直すまでの物語。
◆全40話・完結済み。毎日20時に更新します(最終話まで必ず完走します)。
◆『夜を弔う者』と同じ世界の、海を隔てた東の国の物語。本作単体でお読みいただけます。