あらすじ
異世界に来たものの、仕事も住まいも得られなかったレイノは、吹雪の夜、管理人不在の峠の休憩所へ逃げ込む。湿った寝具を乾かし、凍える旅人たちを必死に休ませたとき、宿で行った仕事が客室の保温性や回復力として蓄積される能力が発現した。人と輸送獣が翌朝には再び歩き出す姿を見て、レイノは荒れた休憩所を本物の宿へ変えると決める。
急ぎの荷を運ぶ配達人ミレナ、寝床の安全を身体で判定する毛玉、食料供給を担うファナ、設備を守る職人ガルド、運営を仕組みに変えるセリオ。仲間たちと食事、浴場、厩舎、客室を整えるほど、宿は豊かに育っていく。
だが訪れるのは人間だけではない。行き場を失った魔物、巨大な竜親子、胞子病の患者、長い寒波に閉じ込められた旅人たち――。食料も建材も生み出せない能力と、仲間それぞれの技術を組み合わせ、レイノは「誰でも安心して休める場所」を街道の先へ広げていく。