あらすじ
十年、炭問屋で炭の目利きをしてまいりました娘が、「目利きしか能がない」と義母になる方に侮られ、炭見本の小箱を開いてお相手いたしましたら、三月でお家の炭が売れなくなりました。
湿った年は火持ちが落ちる。切り口の白みは古さの証。俵の底を掻けば、いくらでも出てまいります。それを読めるのは、わたくしの目だけ。俵に残るのは値であって、値のついた理由ではございません。
わたくしは裁きません。改めの場で、いつもどおり炭を見るだけでございます。ただ小箱の見本と並べていただければ、どちらが売り物かは皆さまがお決めになります。
——三月後、お家の名を炭の値付けで聞かなくなりました。