あらすじ

「生きている人間の愛情ほど、生温かくて不潔なものはない」 民俗学准教授の絃聡一郎(げん そういちろう)は、極度の潔癖症にして人間嫌い。生者が垂れ流す汗や体温、粘着質な情動に絶望的なまでの生理的嫌悪を抱き、常にマスクと手袋で外界のノイズを遮断している。 そんな彼にとって、この世で唯一の聖域。 それは研究室に棲みつく幽霊の少女、帷繭(とばり まゆ)だった。 体温もなく、呼吸もなく、決して汚れることも老いることもない、硝子のように冷たく美しい死者。彼女が与えてくれる絶対零度の静寂だけが、聡一郎の過敏な神経を繋ぎ止める生命線であった。 ある真夏の夜、オカルト的な怪異事案の調査を請け負った二人は、山間部に放置された廃結婚式場跡へと足を踏み入れる。 肝試しの学生を発狂させたというその場所に巣食っていたのは――永遠の愛という美辞麗句にすがりつき、腐敗し、無数の髪と皮脂で編み上げられた巨大で醜悪な「情念のバケモノ」だった。 ムセ返るような不快感と愛憎のドロ沼に対し、准教授は祝詞もお祓いも使わない。 車のトランクから引き抜いた「全長90センチの六角バール」と「巨大なボルトクリッパー」。それら重厚な物理機材を手に、最も神聖な彼女を守るため、自ら進んで不浄の汚泥に身を投じ「病巣の切開手技」に挑む――。 なぜ彼は、吐き気に耐えながら重いバールを振るうのか。 すべてが終わった後、最も清潔な幽霊少女が彼に与える「究極の報酬」とは。 一般の人間にはとうてい理解できない狂気。社会から逸脱した二人だけがたどり着く、歪で最高に純粋な、極低温ホラーアクション短編。 真白透夜さんの自主企画「♑️アブソリュートクラス・カプリコーンマッチ 」の「1万字クラス」に参加しています。 https://kakuyomu.jp/user_events/2912051605325127452

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カクヨム
カクヨム2026/08/03
  • 現在の作品その講義は、死んだ君への弔辞だった【補講】 〜愛の残骸をこじ開け、氷の死者と口づけを〜