あらすじ
少女は、自分が死ぬその日までの未来を知っている。
英雄になった未来も。
世界を救おうとして命を落とした未来も。
誰かに利用され、誰かを傷つけた未来も。
すべて知ったうえで、彼女が最後に選んだ人生は――誰の主人公にもならないことだった。
今は小さな事務所に所属するVtuberとして、毎日穏やかに配信を続けている。
炎上しない。
敵を作らない。
誰かを打ち負かさない。
未来を知る彼女にとって、良い未来を選ぶことは特別なことではない。
歯を磨くように、当たり前の日常だ。
それでも、今日食べたパンの味は今日だけ。
今年の梨は今年だけ。
窓から吹く風も、夜に聞こえる電車の音も、一度しか味わえない。
これは、未来を知り尽くした少女が、
それでも「今日」を誰よりも大切に生きる物語。
静かな毎日の中で、ときどき読者だけが違和感に気づく。
けれど彼女にとって、それはもう、当たり前の日常だった。