あらすじ
二十年、祭の宵の髪を結ってまいりました女髪結いが、「用済みです」と床を追われ、元結一本だけ持って出て、いまは自分の名で宵を立て直しております。
婚約破棄でも離縁でもございません。若い衆に「昔のやり方しか、覚えていないんでしょう」と言われて、承知いたしました。
結いの順は家の格でなく、宵の刻限で決まる。汗をかく踊り手は先に、座るだけの旦那衆は後に。それを数えていたのは、わたしの頭の中だけ。床に残るのは道具であって、いつ誰を結うかではございません。
——祭の宵、崩れた髷が三十七。翌年、床の名は番付から消えておりました。