あらすじ
パチンコ屋の駐車場の片隅、毒々しいネオンが照らす薄汚れた車内。
そこで母親の帰りを待つ少年にとって、唯一の世界のすべては、傷だらけでボロボロのウサギのぬいぐるみだった。行き場のない孤独と退屈を紛らわせるように、彼はそのウサギにしがみつき、歪で切実な愛着を覚えていく。
やがて、夜の闇が深まるにつれて日常は静かに狂い始める。
深夜のファミレスで一時的な平穏を味わった後、親子がたどり着いたのは、DVDや飲みかけのペットボトルが山積みとなったゴミ屋敷のような自宅だった。
そこで発覚した父親の不貞をきっかけに、泥沼の罵声と包丁が飛び交う殺伐とした修羅場が幕を開ける。
恐怖に耐えかね、ウサギを抱えて暗い押し入れへと逃げ込んだ少年。
その閉ざされた暗闇の中で、静かに、しかしはっきりと、腕の中のウサギから少女の声が響く。
「怖いの? 助けてあげよっか?」
ボロボロの縫い目が小さく動き、少年の運命を決定的な狂気へと誘い出す――。
歪んだ愛着と逃れられない家庭の崩壊を描く、異色のサイコホラーサスペンス