あらすじ

十年、婚家の味噌蔵の麹を起こしてまいりました嫁が、「蔵の名で売れているだけ」と離縁を言い渡され、嫁入り道具の麹蓋一枚を抱えて出て、いまは自分の軒に御用看板を掛けております。 雨の名残の朝は窓を一寸半、米が素直なら二寸、昼前に一度だけ返す。それを話す相手は、朝粥の屋台で隣り合う御隠居おひとりだけ。愚痴は下手ですので、口を開けば麹の話になりますの。 離縁の披露に取引先を集めた寄合の上座で、その御隠居が笑って仰いました。「離縁の前に、どなたの麹かお伺いしても?」——御用商の大女将が、十年、毎朝聞いておりました。 ——蔵の名はそのままに、御用の看板だけが、麹について歩きます。

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小説を読もう2026/08/03
  • 現在の作品「離縁の前に、どなたの麹かお伺いしても?」と粥屋の隣の御隠居が笑った日、蔵を追われた私は麹蓋一枚で御用看板を掛け替えます