あらすじ

蜂蜜壺の蓋を、毎朝開けていたのは私だった。 夫より先に起きて、パンを切り分ける。 食卓を整え、銀の匙を添える。 愛していないと告げられた翌朝も。 感謝の言葉は一度もなかった。 屋敷の経営も来客の手配も、すべて一人。 すべてを当然と思われたまま、彼女は命を落とした。 目を開けると、別の家の娘に生まれ変わっていた。 前世の記憶はすべて残っている。 あの食卓も、あの宣告も、消えてはいない。 社交の夜会で、かつての夫と再会する。 彼の目元には涙の跡が刻まれていた。 妻を失ってから泣き続けた人間の顔だった。 けれど彼女は知っている。 愛していなかった人間が流す涙の正体を。 あの蜂蜜壺の蓋が、なぜ閉じたままなのかを。 二度目の人生で、彼女は同じ蓋に手を伸ばすのだろうか。

連載情報

ウェブ小説

配信言語
小説を読もう
小説を読もう2026/08/03
  • 現在の作品愛していなかったのに私が死んで泣いたのは、失ったものの大きさに気づいたからでしょう