あらすじ
2045年。
人類は、究極の計算機を手に入れた。
量子コンピューター。
それは医療、宇宙開発、科学技術を飛躍的に進化させるはずだった。
しかし同時に、人類が築き上げてきた情報社会の根幹を破壊した。
暗号。
認証。
セキュリティ。
国家機密。
金融システム。
そのすべてが、意味を失った。
RSA暗号、楕円曲線暗号、公開鍵暗号――。
数十年、数百年かけても解読不可能とされた暗号体系は、量子アルゴリズムによって短時間で解析される可能性を持った。
世界各国の情報機関は混乱する。
CIAも、MI6も、中国国家安全部も、ロシア対外情報庁も。
どれほど高度な暗号通信を使用しても、相手が量子コンピューターを保有すれば全てが筒抜けになる。
国家による情報戦の時代は終わった。
そう思われていた。
その混乱の裏側で、一人の男が動いていた。
名前――
神谷零(かみや れい)
26歳。
世界でも数人しか存在しない、伝説級のハッカー。
コードネーム。
ZERO(ゼロ)
彼には国家も、思想も、金銭的な目的もなかった。
ただ一つ。
「世界最高の防壁を破ってみたい」
その純粋な好奇心だけだった。