あらすじ

島の真ん中に、誰が建てたとも知れない塔がある。塔は機械仕掛けの兵を吐き、人は札と刀でそれを迎え撃つ。討った数は誉れになり、生きて帰った数は、誰も数えない。そういう帳面で、この島はずっと回ってきた。
 もうひとつ、古い習わしがある。巫女と深く結ばれた男ほど、強くなる。歌は機械兵の足を止め、契りは兵の体を作り替える。後ろで祈るだけと侮られてきた巫女たちは、この島の戦の、もう半分を担える者たちだ。
 武家の三男坊スサナには、剣の才がない。代わりに、数えてしまう。討伐録の水増しも、帰らなかった者の数も。
 演習中に「存在しないはずの塔の地下」へ落ちた日、千年分の知恵を持つ、声だけの絡繰りを拾った。嘘のつけない相棒の勘定が示したのは、五年後、塔から史上最大の軍勢が溢れるという答え。
 機械の軍勢に、機械の相棒と挑む五年。班の戦術、兵站と帳、巫女の歌を戦場へ返す仕組み。そして、死者しか載らない帳への、「生還の欄」の書き足し。
 これは、剣の振れない少年が、絡繰りの相棒と巫女たちと共に、滅びの進軍から街を守り抜くまでの――五年きりの相棒との、約束の物語。

連載情報

ウェブ小説

配信言語
アルファポリス
アルファポリス2026/08/03
  • 現在の作品生還の欄――機械兵の塔に抗う、巫女と侍の島――