あらすじ
ー教授と刑事シリーズ 第一作ー
その目撃証言は、完璧すぎた。
資産家が自宅書斎で刺殺された。隣家に四十年住む七十六歳の老婦人が、
息子が凶器を手に飛び出すのを見たと証言する。時刻も、服の色も、靴の色まで。
だが警視庁捜査一課の音無楓は、ひとつだけ引っかかっていた。
その証言は、聞くたびに少しずつ「詳しく」なっていくのである。
音無が頼ったのは、帝都大学の認知科学者・灰川宗介。
白衣も着ず駄菓子ばかり齧っている、学界の天才で、学生公認の変人。
「人間の記憶を、ビデオテープか何かだと思っていませんか。
記憶は録画ではなく、作文です。しかも赤ペンは、他人が入れられる」
善良な目撃者の頭の中に、誰が、何を書き込んだのか。
そして黙秘を続ける容疑者は、なぜ自ら檻に入ろうとするのか。
記憶という証拠を、科学で解体するミステリー。