あらすじ

婚約解消——十年漉いてきた漉き場を置いて漉き簀を一枚だけ抱えて出た紙漉きが、いまは自分の名で紙を漉いています。 水の冷たさは指で測る。楮の叩きは音で止める。干し板の頃合いは紙の反りで決まる。それを数えていたのは、わたしの頭の中だけ。 漉き簀を一枚だけ抱えて出ました。漉き場は置いてまいりました。ただ、刻限ちょうどに来る紙屋がひとり——待つのが癖になっていた、と教えてくれました。 ——いまは自分の名で、紙を漉いております。

連載情報

ウェブ小説

配信言語
小説を読もう
小説を読もう2026/08/02
  • 現在の作品婚約解消。「あれは放っておけねえ」と寒漉きを後にされ続けた十年、漉き簀を一枚抱えて出て、いまは自分の名で紙を漉いています