あらすじ

「明日から、第一夫人はセシリアにお願いすることになりました」 「ですが、母上の役は、これまでどおり君に」 「それから、明日からは、客の前にも王家の使者の前にも出ないでください」 夫の亡き母を演じている最中に、私は妻の座を明け渡すよう告げられた。 三年間、エステルは毎晩この部屋へ呼ばれてきた。会ったこともない義母を演じ、額に手を置き、七つ数えて名を呼ぶ。そして、あなたは正しいことをなさったのですから気に病む必要はありません、と告げる。 義母は、病の当主に代わってこの領を治めた人だった。夫は今も、何を決めるにも「母上なら何と言うか」を問う。この三年、領地を動かしてきた判断は、すべて夜の部屋から出ている。 夫が隠したいのは、妻ではなかった。判断の出所だった。 私は毎晩、母上の言葉として彼を赦し、最後にひとことだけ付け足してきた。誤りがあったなら、明日、謝ってやり直しなさいませ、と。 彼はその一文だけを、一度も帳面に残さなかった。 翌日の就任式。夫は自分の有能さを証明するため、母の遺した青い冊子を王家の使者へ差し出す。 だがその日、栞は挟まれていなかった。 三年、彼が私の名を呼んだことは一度もない。 ※恋愛は薄めです。夫は最後まで、自分が何をしたか分かりません。分からないまま、全部失います。

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小説を読もう2026/08/02
  • 現在の作品毎晩、夫の亡き母を演じさせられて三年。第一夫人の座は愛する方に譲れ、母の役だけは続けろ――お断りした翌日、夫は領主になれませんでした