あらすじ
古代中国は商王朝の都、大邑商。豪華絢爛にして息の詰まる「最高級の鳥籠」たる後宮で、17歳の鬼道使い・褒姒(パオ・シー)は、底辺の身分として息を潜めて生きていた。鬼道を司る一族に生まれた彼女は、ただ無事に生き延びることだけを目標にしていた。
そんな宮廷の話題を独占しているのは、ひとりの妃の噂だった。皇帝の愛をほしいままにする底知れぬ美女、妲己(だっき)。「彼女が舞えば鳥が落ちる」「聖女か、それとも妖狐か」——鬼道家としての本能から、得体の知れない恐ろしさを感じ、褒姒はその名から耳を塞いでいた。
ある日、誰も寄り付かない薄暗い薬草庫で、褒姒はひとりの不思議な少女と出会う。ボロボロの薄青い衣を纏った下女・翠(すい)。彼女は生と死が隣り合わせの宮廷で、野原にいるような無邪気さで笑い、人の心の深淵をあっけなく覗き込んでくる。
「星見るの好き? 空の匂いがする」
どこまでも自由で、人を惹きつける翠。褒姒は、同じ下女仲間、末喜(マッキ)、夏姫(ナツキ)とともに、この奇妙で人懐っこい少女と密かな友情を育んでいく。しかし翠は時折、無念の死を遂げた者たちの思いを背負う深い哀しみと、恐るべき「剣の理」を隠し持っていた。
一方、宮廷では、絶対的権力者・重栄(ちょうえい)の影が落ち、陰謀と暗殺の気配が渦巻いていた。暗躍する間諜、舞の裏に隠された陰謀。迫り来る戦火と血の匂いが、少女たちのささやかな居場所である鬼道所にも容赦なく忍び寄る。
歴史の陰で「悪女」「傾国」と呼ばれた女たち。宮廷という華麗なる地獄の底で、笑い、抗い、生き抜こうとする彼女たちの運命が交差する時、宮廷を揺るがす壮大な「騙し合い」の幕が上がる! 果たして、妖狐・妲己とは? そして少女たちは、自らの手でこの鳥籠から抜け出すことができるのか。