あらすじ
明治三十一年。
帝国大学で地方習俗を研究する真壁修一は、帰潮祭の調査のため寄波島を訪れる。
人口わずか二百人ほどのその島では、「海へ捨てたものは必ず島へ返ってくる」と信じられていた。
島民は親切だった。
だが、神社の話になると誰も口を閉ざし、夜になると浜へ近づこうとしない。
翌朝。
北の入り江に、一人の男の半身遺体が漂着する。
遺体が握っていた木札には、
『右は夷へ』
とだけ刻まれていた。
主人公の真壁は、元新聞記者・瀬川恒一の死を追ううちに、島では双子の記録だけが不自然に消えていること、神代家と帰潮祭が何かを隠していることへ気付き始める。
やがて民俗学の調査は、四百年続く因習と、自らの出生へ繋がる真実へと変わっていく――。
これは、人が神を作ったのか、それとも神が人を縛ったのかを問う、明治民俗ミステリー。
この島では、死者も、罪も、帰ってくる。