あらすじ
「あの!」
とある夜、駅前の歩道。仕事帰りの会社員や学生、買い物帰りの人々が絶え間なく行き交い、飲食店やコンビニの灯りがアスファルトを白く照らしていた。その雑踏の中、青年は萎みかけた風船のように背中を丸めた一人の男に声をかけた。
男は足を止め、ゆっくりと振り返った。
スーツ姿のごくありふれた会社員風の中年だった。ネクタイはわずかに緩み、肩が落ち、表情に疲労が滲んでいた。
男は青年の顔をじっと見つめると、何度かまばたきをした。
「あ、あの……」
「え……は、はい?」
青年がもう一度口を開くと、男は自分が呼び止められたことを確信したらしい。だが、その表情には困惑の色が濃く浮かんでいた。