あらすじ
かつてこの国を愛した「黒髪の聖王」は、貴族たちの陰謀により虐殺者の汚名を着せられ処刑された。以来、黒髪は「悪魔の印」として迫害の対象となった。
辺境の隠れ里で、恩師ガメルに鍛冶を教わりながら静かに暮らす黒髪の青年・ガイン。彼は、村に現れた「黒髪ではない少女」に恋をし、彼女から贈られた短剣を宝物のように磨き続けていた。
しかし、その幸福はすべて「娯楽」だった。
少女の密告により村は正規兵に襲撃され、ガインの目の前で恩師も仲間も惨殺される。絶望するガインに、少女は冷酷に言い放つ。
「あんたら家畜の価値は、私たちが楽しむための『悲鳴』でしかないのよ」
十数年後。
地方都市の門前に、極限まで痩せ細り、白目を飲み込むほどの漆黒の瞳を持つ男が現れた。
彼の手には、鏡のように鋭く研ぎ澄まされた「折れた短剣」の成れの果て。
彼は叫ばない。怒らない。ただ、歩みを阻むすべてを、呼吸するように切り刻む。
これは、全てを失った男が、己の無知と世界の理を研ぎ落とすための、最も静かで最も凄惨な復讐劇である。