あらすじ

動画配信会社に勤める柏木亮太は、正体不明の配信サービス「黒歴史配信」の噂を耳にする。毎晩0時、誰かの忘れ去った過去が、本人の同意なく映像として公開されるという。  ある夜、亮太が目にした動画には、見覚えのある中学の教室が映っていた。数人の生徒が一人を取り囲んでいる。中心にいたのは、かつての野球部仲間・森田だった。だが亮太には、その場面の記憶がまったくない。同じクラスで三年間を過ごしたはずなのに、その部分だけが不自然に平らだった。  翌日、森田は失踪する。ネット上では身元が特定され、勤務先まで晒された後のことだった。続いて同級生の北条にも動画が届く。「これ、俺だ」という言葉を最後に、北条もまた姿を消す。そして亮太のもとに、差出人不明のメッセージが届く。次は、お前の番だ。  同僚の早坂すみれは、自社サーバーへの不審な侵入を突き止めていた。侵入は半年前から続き、動画公開の直前に必ず行われている。何者かが、この会社のシステムを使って過去を掘り起こしている。  一方、亮太は卒業アルバムの中に、まったく覚えのない名前を見つける。深水航。文集には「野球部の柏木くんは、いつも輝いて見えます」という短い作文が残されていた。進路欄だけが空白のその生徒は、卒業直前に自ら命を絶っていた。  配信の主は、深水航の弟・悠人だった。兄の遺した日記には、加害者三人の名前が記されていた。森田健太、北条誠一、そして最も頻繁に登場する柏木亮太。悠人は情報工学を学び、人が抑圧した記憶を映像として再構成する技術を作り上げた。すべては、忘れられた兄の時間を掘り起こすためだった。  0時。亮太の動画が再生される。教科書を投げ捨て、少年を突き飛ばす自分の姿。そして、言わされていた少年の声。  動画が終わると同時に、亮太の日常は音もなく消えていった。社内システムから締め出され、すみれとの連絡も途絶える。  数日後、次回予告に亮太の名前はなかった。罰も赦しも与えられないまま、彼は誰からも忘れられていく。  忘れた側だけが、忘れられずに残される。

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エブリスタ
エブリスタ2026/08/01
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