あらすじ
「すてきな記事ありがとうございます」と言いながら、彼女たちは私を「餌」にし続けていった。
鳴かず飛ばずの語学ブロガーだった私。
日本でまだ無名だった海外アーティストの魅力を軽い気持ちで紹介したところ、ブログは予想外のバズ。
それが悪夢の始まりだった。
ルールも前例もない「初期ファンダム」。
その水面下では、推しに一番近いポジションを奪い合う、静かで熾烈な椅子取りゲームが繰り広げられていた。
最初は礼儀正しかった読者たちは、いつしか私のコメント欄を自分たちの拠点へと変え、「私たちこそが彼の理解者だ」と勝手に盛り上がり始める。
私の言葉や解釈はいつの間にか彼女たちのものになり、気づけば「私たちのために書き続けて」と優しく、しかし確実に首根っこを掴まれていた。
彼女たちの執着は、いつしかアーティスト本人だけでなく、発信者である「私」にも向けられていく。
コメント欄を閉じても、更新を止めても、逃げ場なんてどこにもない。
「善意」という名の蜘蛛の巣に絡め取られ、境界線を侵食されていく個人ブロガーの、静かで狂気に満ちた記録。