あらすじ

わたしの仕事は、番登録の書類を受け取って、判を押すことです。

獣人のご夫婦が来て、紙を出して、わたしが押す。それだけ。人間のわたしには縁のない話ですけど、この判は速くて、まっすぐで、かすれません。そこだけは誇りです。

その書類を、三日続けて突き返されました。

二階から下りてくる白い狐の監察官さま。役所じゅうで、この人に書類を突き返されなかった人はいません。

一日目は、点が薄い。二日目は、「三」の横棒が短い。三日目は、捺印欄から0.5ミリ出ている。

四日目は、朱肉が濃い。

……あの、これ、どういうことですか。

窓口の列がざわつきはじめて、同僚の目が変わって、課長が逃げ腰になって、わたしの判が知らないところで使われていて。

気づけば、わたしのまわりで何かが動いています。

あの人の名前を、わたしはまだ知りません。

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アルファポリス
アルファポリス2026/07/20
  • 現在の作品番登録課のしがない人間の窓口係です。無表情な狐の監察官さまが毎日突き返してくる「不備だらけの書類」、これ全部わたしに会う口実ですよね?