あらすじ

天音弓香は、代々武道を受け継ぐ武家の娘として育った。 幼い頃から剣を握り、弓を引き、ひたすら鍛錬を重ねてきた。武道は、弓香にとって義務であると同時に、誇りであり、生き方そのものだった。 けれど、成人してから繰り返された縁談の席で、男性たちが見ていたのは、弓香の美しさや家柄ばかりだった。 武道を続けていると知れば、怖がられた。 結婚したらやめてほしいと言われた。 強い女性には可愛げがないと、何度も告げられた。 やがて弓香は、静かにあきらめる。 強い女性は、愛されない。 縁談とは、家のためにするもの。 自分が恋をするためのものではないのだと。 そんな弓香の前に現れたのが、年下の青年、霧島縁之丞だった。 彼は弓香の容姿ではなく、立ち方を見た。 家柄ではなく、積み重ねてきた武道を見た。 強さを怖がらず、その力の使い方を「綺麗」だと言い、強いままの弓香を「素敵だ」と言った。 はじめて、自分自身を見てもらえた。 そう思った時、弓香の心には、知らない感情が芽生えはじめる。 もう少し話したい。 もっと会いたい。 自分の射を見てほしい。 けれど、縁之丞の心には、すでに別の誰かがいた。 誰も悪くなかった。 だからこそ、弓香は自らその恋を手放す。 これは、強く、誇り高い一人の女性が、生まれて初めて恋を知り、同じ日に失恋を知るまでの物語。

連載情報

ウェブ小説

配信言語
小説を読もう
小説を読もう2026/08/02
  • 現在の作品泪