あらすじ
「私、きれい?」
「……わかりません」
人の顔をひとつの像として捉えられず、誰の顔も覚えられない男は、雨の夜、マスク姿の女――口裂け女と出会う。
きれいとも醜いとも答えられない男を、女はなぜか殺さなかった。
だが翌日、姿を変えた女が再び現れる。そして、同じ問いを繰り返す。
逃げるべきだとわかっているのに、男はいつしか彼女を待つようになっていた。
誰の顔も覚えられない男と、決して忘れられない顔を持つ女。二人の奇妙な逢瀬は、やがて思いもよらない結末へとつながっていく。
なぜ、彼女は男を殺さなかったのか。
「見ること」と「覚えられること」をめぐる、切なくも恐ろしい現代怪談。